
なるべく短期間で治療を終わらせたい!スピード矯正とは?

通常の3分の1の早さで美しい歯並びに
スピード矯正とは、短期間で美しい歯並びへと導く矯正治療で、通常の治療に比べると2分の1から3分1の短期間で治療が終わります。スピード矯正は、大きく分類するとコルチコトミー法などの外科手術を伴うものと外科手術を必要としない先進的な矯正器具による矯正の2種類があります。結婚式当日までに歯並びを美しくしたい方などの利用が目立ちますが、スピード治療には高い技術を伴い、歯並びによっては適応が難しい場合もありますので、治療のポイントを確認しましょう。
こんな人におすすめ
- 結婚式や入社式などの予定があり、短期間で治療を終えたい人
- 長期にわたって通院するのが難しい人
- より理想的な歯並びを追求している人
スピード矯正の
メリット・デメリット
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メリット
- 短期間で歯並びが美しくなる
- 良い治療結果を得られやすい
- 歯の動きがスムーズになるので痛みが少ない
- 治療後の後戻りが少ない
- 抜歯をしないで矯正治療が出来る場合がある
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デメリット
- 外科的手術を行う場合、歯肉(歯ぐき)にダメージを与えることがある
- 歯並びの状態などによって、適応が難しいケースがある
- 対応できるクリニックが少ない
- 歯槽骨(歯を支えている骨)が溶けてしまうことがある
どんな治療方法があるの?
スピード矯の治療法には、インプラント矯正とコルチコトミーなどの外科手術を行った後に、通常の矯正治療へと移行するものと外科手術を必要としない「矯正器具」によって矯正のスピードを早めるものがあります。施術法ごとにメリット・デメリット、費用を確認しましょう。また、歯並びによっては適応が難しいケースもありますので歯科医への相談が重要です。
また、クリニックによっては、症例や状態によって早期に施術を完了する保証はできないといった観点から、「スピード矯正」といった表記を行っていないクリニックも多くあるので注意しましょう。
インプラント矯正
インプラント矯正とは、通常のインプラントより小さな矯正用インプラント(直径1.4-2.0mm、長さ6.0-10.0mm)を奥歯の骨の部分に埋め込み、土台とすることで歯の移動が、効率的になることで、「矯正治療の効果向上」、「治療期間短縮」が可能となります。
また、インプラントの材質は骨折時などのプレート固定に使用されているチタンのため、アレルギーが起こることはほぼありません。さらに、この矯正用インプラントは小型のため、埋め込む時の痛みもほぼなく、矯正治療が終わった後に撤去されるので、体への負担も心配も少なく、傷が残ることもありません。
インプラント矯正の費用:1本25,000-30,000円程度
インプラント矯正が有効な症例:
乱杭歯(叢生)、ガミースマイル、開咬、上顎前突、下顎前突症など
メリット | ●治療期間が大幅に短くなる ●よい治療結果を得られやすい ●難症例に対応できる ●従来の矯正治療ではできない歯の移動が可能になる ●外科矯正(アゴの骨を切除する矯正治療)を回避できる可能性が高まる |
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デメリット | ●インプラントを移植する手術が必要 ●手術を行うため、治療費用が高くなる ●対応できるクリニックが少ない ●インプラントの脱落 ●インプラント周囲の炎症 ●急激に歯を動かすと歯槽骨(歯を支えている骨)が溶けてしまうことがある |
参照元
補綴治療に先立ち歯科インプラントをアンカーとして矯正治療実施後上部構造を装着した骨格性下顎前突症の 1 症例
コルチコトミー法(corticotomy):歯槽骨皮質骨切除術
コルチコトミー法とは、外科手術によって、矯正治療で動かす歯の周りにある「硬くて動きの遅い皮質骨」を一部除去することによって、歯の動く範囲を拡げ、歯が動く際の抵抗を減らすことで矯正のスピードを早める矯正法です。
手術時間は1時間ほどと短く、リスクが少ない治療といえます。手術後は矯正装置を装着して歯並びを整えていきますが、コルチコトミーによって無理な力をかけずに歯が動くようになるため、矯正装置の装着期間が短くなり、また、歯が動くことによる違和感も軽減されます。
さらに、手術の副次的効果として、皮質骨を除くときに掘る溝が血液の巡りを活性化させることで、歯肉が綺麗なピンクになることも報告されています。
コルチコトミー法の費用:150,000円~00,000円程度※基本の矯正費用別
メリット | ●抜歯をしないで矯正治療ができる場合がある ●矯正装置の装着期間が短縮される ●矯正中の痛みや違和感が少ない ●治療後の後戻りが少ない |
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デメリット | ●外科手術を伴い、術後に歯ぐきが腫れることがある ●歯並びによっては適応が難しい場合もある ●成長期の子供には適応できない ●手術が伴うため、治療費が高くなる |
ヘミオステオトミー法
ヘミオステオトミーとは、コルチコトミー法によって切除した骨の下にある海綿骨という柔らかい骨にヒビを入れることで歯を移動しやすくするといった治療法です。
一般的に、コルチコトミー法と併用される方法で、手術時間はコルチコトミーと合わせて1時間半程度となっています。矯正が終了するまでの期間は、従来の一般的な矯正治療の1/4程度。最短6ヶ月で歯列矯正を完了させることが可能です。
ヘミオステオトミー法の費用:150,000円~500,000円程度※基本の矯正費用別
メリット | ●歯列矯正に要する期間が大幅に短縮される ●従来の歯列矯正治療に比べて後戻りのリスクが低い ●手術前よりも骨が丈夫になる(骨折が治癒すると、骨折前より骨が上部になる原理) |
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デメリット | ●外科手術を前提とする治療法なので、腫れや感染症など外科手術に特有のリスクがある ●まだ成長期にある子供は適用にならない ●治療費が高い ●取り扱っている歯科医院が少ない |
オステオトミー法:歯槽骨切術
オステオトミー法とは、歯の土台となる歯槽骨を手術で切れ目を入れて、歯槽骨ごと移動させる矯正法です。侵襲性が高く、患者への負担は小さくありませんが、歯の土台そのものを動かすため、コルチコトミーよりも早く歯を動かすことができます。また、コルチコトミーでは対応できない症例時に行われます。手術時間の目安は約2時間でその日のうちに帰宅できます。
オステオトミー法の費用:150,000円~500,000円程度※基本の矯正費用別
メリット | ●従来の歯列矯正に比べて治療に要する期間が短い ●ヘミオステオトミー・コルチコトミー法では治療期間が短縮されない患者にも適用が可能 ●歯列矯正の効果が高い |
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デメリット | ●外科手術に2時間を要するなど患者の負担が小さくない ●術後の腫れなど、外科手術特有のリスクがある ●通常の歯列矯正に比べて、費用が高額になる ●取り扱っている歯科医院が少ない |
オルソパルス
オルソパルスとは、カナダのバイオラックスリサーチ社によって開発され、2016年に発売された光による矯正加速装置です。自宅でできる施術で、1日10分間(上顎、下顎各5分)、装置を使って口の中に光を当てるだけで、歯列矯正、インビザライン等のマウスピース矯正の治療期間が約3分の1から半分まで大幅に短縮されます。コルチコトミーのような外科手術によるリスクを避けることができる点、また、アメリカ食品医薬局(FDA)による認可を受けている点からも安全性が証明されています。
オルソパルスの費用:通常の矯正費用+180,000円程度
メリット | ●治療期間が短くなる ●歯の移動時の痛みが軽くなる ●装置の利用が1日わずか10分 |
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デメリット | ●費用がよけいにかかる ●症例によっては効果が薄い場合がある |
デーモンシステム
デーモンシステムとは、アメリカの女性矯正歯科医デーモン氏が開発した画期的な歯列矯正装置。装置の開発以来、デーモン氏自身を始め多くの患者の矯正を実現してきた、歯列矯正法です。
矯正の原理は、従来のブラケットシステムと同じように、ブラケットに通した形状記憶ワイヤーの力による矯正。ただ、従来の方法ではブラケットにワイヤーを強く縛り付ける必要があったのですが、デーモンシステムではブラケットとワイヤーを軽く接触させるだけで矯正がスタート。従来の方法に比べて歯にかかる力が弱くなるため、矯正中の痛みが軽くなります。
歯にかかる力が弱いと矯正効果が下がるのではないかと心配になりますが、不正な歯並びに引っ張られてワイヤーが変形する恐れがないので、逆に矯正効果は上がり、治療に要する期間も短縮されるという結果を得られています。
最近では白色セラミックによるデーモンシステムも導入されたため、治療効果にだけではなく、審美性の面でも評価が高くなってきました。
デーモンシステムの費用:800,000-1,000,000円程度
メリット | ●治療期間が短くなる ●痛みが少ない ●抜歯せずに治療できる可能性が上がる ●手入れがしやすい |
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デメリット | ●装着時に違和感を感じる時がある ●審美的に勝るデーモンクリアは上顎用のみしかない |
クリアスナップシステム
クリアナップとは、クリアブラケットにかぶせる白いキャップのこと。通常の矯正装置の場合、メインとなるワイヤーを針金やゴムで強く留める方式を採りますが、この針金やゴムに代わってクリアナップで軽く留める方式のことを、クリアナップシステムと言います。
クリアナップシステムでは、メインとなるワイヤーを強く押さえつける必要がないため、ワイヤーに緩い遊びができます。この遊びのおかげで、歯茎には歯の移動に必要な酸素・栄養素が十分に行き渡り、治療をスピーディーに終わらせることが可能となりました。この治療期間の短縮の原理については、デーモンシステムやクリッピーCと同じになります。強い力を歯に加えないわけですから、もちろん、矯正中の痛みも大幅に軽減されます。
なお、クリアナップの色は半透明。これをクリアブラケットにかぶせるわけですから、審美的にも非常に優れた矯正装置となります。加えてホワイトワイヤーを使用すれば、一目見られただけでは矯正をしていることに気づかれません。
クリアスナップシステムの費用:800,000-1,000,000円程度
メリット | ●治療期間が短くなる ●歯の移動時の痛みが軽くなる ●審美性が高い |
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デメリット | ●デーモンシステムと比べて抜歯が必要となる可能性が高い |
スピード矯正の流れ
スピード矯正は、患者の状態や目標によって、様々な手法の組み合わせで行なわれることがあります。いわばオーダーメイドな治療と言っても良いでしょう。ここでは一例として「コルチコトミー法と歯列矯正の併用」の流れを紹介します。
初診
スピード矯正の進め方を中心に、メリットやデメリット、リスクなどを説明します。
検査
治療に必要な情報収集のため、レントゲン撮影や写真などを行ないます。
治療方法の説明
検査の結果に基づき、具体的な治療計画を説明します。初診からここまでの間に、計3~4回の通院が必要となります。
矯正装置の装着
口内に矯正装置を装着します。
手術
コルチコトミー法による手術を行ないます。
定期的なチェック
1~2週間に一度通院し、現状のチェックを行ないます。
矯正装置の取り外し
口内の矯正装置を取り外します。初診からここまでの間は、最短で6ヶ月、最長で1年程度となります。
保定
保定装置を取り付けて歯列の固定を図ります。
スピード矯正の注意点
スピード矯正による治療経験が豊富な医師に相談
コルチコトミーなど外科手術によるもの、また、外科手術を伴わない「加速矯正器具」によるスピード矯正いずれも日本では十分な経験を積んだ歯科医は少ないのが現状です。特にコルチコトミーなど手術を伴う治療は医師の技量の影響も大きくなり、また手術によるリスクもあるため、歯科医選びはより慎重に行う必要があります。
スピード矯正の成功には、外科手術の技術だけでなく、歯列矯正、口腔外科、インプラントなどさまざまな分野の専門性が欠かせません。このような専門性を持ち、さらに「スピード矯正」の経験を豊富に積んだ歯科医、クリニックを探して、できればセカンドオピニオンなども求めていきましょう。
スピード矯正をしなくても短期間で治療が終わる可能性がある
症例によっては必ずしも「スピード矯正」を行わなくても短期間で矯正が完了することがあります。単に治療期間を優先してスピード矯正に固執するのは本末転倒です。
矯正治療にしっかり時間がかけられるようになるまで時期をずらす、転勤や引っ越し先で矯正歯科を探すといった選択肢もあるはずです。イベントごとなどで急を要する場合は仕方がありませんが、安易にスピード矯正による治療を決めるのではなく、歯科医師が提案する治療法にも耳を傾ける姿勢が大事です。
スピード矯正を行った方の体験談
H・Iさん 22歳女性(コルチコトミー)
「子供のころから出っ歯とすきっ歯に悩んでいたH・Iさん。従来の矯正治療法では、矯正装置をはずすまでに約3年かかる症例ですが、コルチコトミーと矯正治療を併用する治療方法によって、治療を開始してから1年で歯並びは改善されて、矯正装置をはずすことができました。」
しらたまさん 20歳代女性(インプラント矯正)
「私の歯は、動かしずらいと言われたので アンカースクリューを上下に用いた治療 ゴムかけをしたりと色々な技術を使って下さるので 上の歯は、1年たちましたがだいぶ歯の隙間も 落ち着いてきて歯並びもキレイになってきているので 笑うのが楽しいです。」